熊と人間の距離感/東洋の叡智

いきもの

今年は熊による被害が相次ぎ、政府がやっとクマ被害対策へ動き出しました。

もう本当に、遅いくらいです。おそらく政府側もどのようにしていいのか分からず、長年放置されてきた問題だと思います。

最近、札幌市南区の農家さんと熊について話す機会があり、たいへん興味深いことを仰っていました。


「この辺は、元からクマ出るよ。あの辺の山の麓の林のところ、住宅がすぐ隣接してるでしょ。林にはクマ出るけど、住宅街には出てこない。人間とクマの住む間の、一定のボーダーラインがあったんだ」

山と住宅街の間の林が、クマとの境界線

「もともと今の住宅地がある所って、農地だったんだ。ちょうどそこが境界線だったのに、どんどん住宅地になっていった。だから人間がクマの境界線に近付いていったような感じ」

住宅街のある地域は、以前は農地だった

「山の食べ物が減ってるというのもあるけど、それよりも『人を怖い』と思わなくなったクマが増えたんだよね。そして人を怖がらないクマが子を産んで、子育てをする。その時に『人は怖いんだよ』『近づいたらダメだよ』ということを教えない。」

「人間側も、クマに対する危険性の教育がちゃんとできていないよね。だから、クマも人間も、距離感が分からなくなってるんだ」

この話を聞いて、クマが子育ての時に人間が怖いと教えてくなっている、というのが強く印象に残っています。

人間の子育ても、時代によって全然違ったりすることが多いかと思いますが、環境が変化していけば、そりゃあクマの子育て事情も変わるよな…と思いました。


とにかく、院長が龍樹会でもよく話していたように、常に自らの〈危険センサー〉を働かせておかなければなりません。この咄嗟の出来事に対応しようと身体が無条件に動くセンサーが、現代人は非常に鈍麻になっています。

昔の人は、常にどんな身の危険が襲ってくるか分からない状態の中で暮らしていたので、センサーがきちんと動いていました。生きるか死ぬか、という命のやり取りがされていた時代では、当然のことだったでしょう。

今の日本においては、地域差は少しあるかもしれませんが、ある程度安全だと認識できる環境の中で我々は暮らしています。そうなると、当然危険センサーも鈍りますよね。


常に世の中に対して不安を抱いて生きるのではなく、この先どんなことが起こりうるかを常に想定して対応する力、が備わればいいのです。実体のない漠然とした不安を感じていても、仕方ありません。

でも、世の中は情報過多で不安を煽るコンテンツだらけです。そんなことに惑わされない「考える力」「行動する力」が身に付けば、不安は消えていきます。というよりも、物事に対して不安に思わなくなります。

東洋の叡智の中には、世のあらゆる事に対応するメソッドが溢れているように感じます。

院長が龍樹会で行っていることにしろ、先見先知の学問と呼ばれている気学にしろ、全部そうです。もちろん鍼灸も同様で、病気になる前の「末病」を防ぐものと古来から考えられていました。先人たちは、不安要素を打破する為の策を常に考えていた訳です。

東洋の叡智というタイトルを付けましたが、実は洋の東西を問わず共通点は多かったりします。

私たちが普段行っている反応点治療は、神経生理学を基盤とした考えのもと成り立っている治療法です。ですが、普段の臨床の中で「ツボと反応点の場所が一致するな」という事は非常に多いです。

ツボは「経穴」とも言いますが、大まかにいうと身体に張り巡らされた川の流れのような「経絡」に点在する、気が集まったり、あふれ出るような箇所です。

顔にも経絡・経穴はあります

鍼灸には様々な流派や手法がありますが、身体の状態を診て不調を悪化させない・防ぐという点は共通しています。

話が右往左往しましたが、日常の危険にしろ、身体の不調にしろ、早めに手をうって対策する方が当然良いです。また近々、合間を見つけて更新します。


~あとがき~

猟銃免許持っている方いわく「眉間やこめかみ撃たないと死なない。急所撃っても10分以上は呻ってる。怖いっスよ」と話していました。

日常でクマに出会わないように過ごせればベストですが、最近はどこにでも出るので常に気を張って外出しなければなりません。

ちなみに、柔軟剤や香水はNGだそうです。クマは犬の10倍以上の嗅覚を持つと言われており、数キロ先のニオイまで嗅ぎ分けることができます。柔軟剤などの強い匂いをまとうと、人間を恐れなくなったクマへ「人間がここにいるよ~」と自ら発信していることになります。

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