冷え
冬だけでなく、夏もつらい冷えは、悪化するとしびれの感覚や触っても分からないような嫌な感覚も出てきます。
冷えは、不快でありつらい症状ですが、生命に関わったり、重大な障害を直接招いたりすることはありません。
そのため、病院では十分に対応して貰えないつらさもあります。
冷えが改善すれば、過度な厚着、カイロ、湯たんぽは必要なくなります。
冷えの原因
冷えは、感じるだけのものではありません。実際に局所の温度は、低くなっていることもあります。皮下や筋肉の血管が細くなり、血流が充分でなくなると冷えの感覚がおこります。
では、なぜその部分に生じるのでしょうか? よく起こる手足の先について考えます。手足の先につながっている筋肉の硬直が起こると、筋が引っぱられ、緊張が生じます。その結果、交感神経の活動が高まり、血管が収縮し、血行不良となります。そして、冷えを感じます。また、寒さに対して身体は、交感神経を亢進させます。それがまた、血管を収縮させ、血行不良をまねきます。
また、症状のある部位に神経が反射する内臓に不調があっても、血管につながる交感神経を緊張させます。交感神経が緊張すると毛細血管が細くなります。手の冷えなら 咽、肺、気管支、心臓のが原因で、持病があったり、咽が弱い、風邪をひきやすい、煙草の吸いすぎも関係します。足の冷えなら、下腹部の内臓が弱っています。下痢気味である、頻尿、生理痛がひどい、子宮、卵巣、前立腺に持病がある、などの心あたりはありませんか?
冷え対策
東洋医学では「医食同源」や「薬食一如」と言われるように、食べ物も重要な位置を占めています。薬膳では、五性(寒・涼・平・温・熱)という体を冷やすもの、温めるもの、あるいは偏りが少ない食べ物、に分類されます。
他に、局所だけでなく全身を考えたとき「貧血」も、冷えの一因になります。貧血とは、赤血球の少ない状態です。貧血になると、全身に送られる酸素が不足するため、細胞で十分なエネルギーを燃やすことができません。結果、熱量不足になり、末梢も冷えることになります。末梢が冷えるのは、身体の中心の温度を下げないためです。つまり、身体全体の熱量が足りていないことも原因になります。
また、重大な病気が隠されていることもあります。たとえば、動脈硬化や糖尿病による血行障害などです。まずは、原因を探ることが大切です。
冷えの鍼灸治療
まずは冷える部位の血流を改善します。血流が悪くなるのには、筋の緊張や血管の収縮にあります。それに対する鍼灸治療としては、筋肉の緊張を和らげます。それには、症状の現れている部分だけではなく、身体の中心に近い筋肉や、反射を起こす同じ脊髄レベルの臓器の不調を改善することも必要です。足先が冷えやすいなら「腰、お尻の筋肉の緊張」と「下腹部臓器の不調」を、手先が冷えやすいなら「肩まわりの筋肉の緊張」と「肺、気管支、のどの不調」を施術します。
内臓の不調がそのままでは、冷えやすい体質は変わりません。内臓の不調を改善して血管につながる交感神経の活動を抑えることが根本対策になります。弱くなっている内臓のツボを探して温かい温灸、やさしいハリで刺激をします。継続した優しい刺激は、内臓に働きかけて炎症を鎮め、また内臓の循環も良くなり機能の改善ができます。
もちろん、身体全体のエネルギーも不足していれば、体温も低くなるでしょう。極端な食事制限や、栄養不足による貧血なども原因になります。同じ冷えでもその原因は人それぞれなので、その人に応じた対策が必要です。
冷えのセルフケア
自宅でできる簡単な冷え対策として、お灸もお勧めしています。症状の改善には毎日の優しい刺激の積み重ねが効果を発揮します。施術ごとに必要なツボに印をつけて、ご自分でも対策していただけます。毎日の簡単な習慣で、冷えが改善します。困った冷えに、やさしい鍼とお灸が力になります。