本日の治療では、腰痛が主訴の患者さんに対する鍼灸治療を行っていきました。腰痛の場合、一般的には腰部の筋肉に着目しますが、龍樹鍼灸院ではまず下腹部へのアプローチから始めます。やはりお腹への鍼、ローラー鍼、灸によって反応は良くなりますし、施術後は痛みが改善しただけではなく姿勢もスッと真っすぐに伸びていました。
私は基本的に3食キッチリと食事を摂るのですが、この日はお昼ご飯を食べる時間がなかったのでそのまま龍樹会が始まりましたが、漫談というよりも気候変動の話などの実質的な話が多かったです。毎回、どれも必要な話ばかりですが今回は私自身もこれまで学んできたことの総復習になりました。
人間が暮らしを営む中で、季節・気候を無視して生活ができないのは当然です。
「明日は雨が降るので冷え込みます」「傘を忘れずに」「しっかりと暖かい服装をしましょう」と、天気予報ではいつも当たり前のことのように言われていることでも、ちょっとでも防寒を怠るだけで風邪をひいたり体調を悪くするのは当然です。何故なら人間は単体で生きているだけでなく、自然リズムの中で生活をしているからです。
私は毎日かかさずチェックしますが、中には天気予報を全く見ない人もいます。東洋医学では、自然界の変動と人間の身体の不調・変化が密接であると考えます。
東洋医学の話をすると「東洋思想の五行論の根拠は?」「東洋的な鍼灸は古い、現代にそぐわない」という話題があがったり指摘される(特に西洋鍼灸を中心に学んでいる治療家からが多いです)のですが、国々で六行・四行だったりする事もあるので地域差がある、というのは事実です。チャクラに関しても7つではなく、地域によって数が違いますよね。日本鍼灸の歴史の中でも五行論に関して懐疑的に思い、五行にとらわれない治療をする流派も生まれています。
五行論に関しては実は以前もブログに書いたのですが、やはり不明瞭なものに沿っているとも言えます。しかし五行に沿って日本人は生活を営んできたので、五行摂理の否定をすると、我々先祖の暮らし全てを否定することにもなります。
どうしても現代医学の発展・研究結果ばかりにフォーカスされがちですが、医術の本来の漢字<毉>の一文字が歴史的背景を物語っていますし、正しく理解していれば暮らしと医術を切り離して考える事はできないでしょう。
そしてWHOが国際疾病分類(ICD)に伝統的な東洋医学の章が追加され、ますます東洋医学がグローバル化しているのは事実です。
https://www.niph.go.jp/journal/data/67-5/201867050008.pdf
人に何かを説明する時には正当性云々も大切でしょうが、五穀豊穣、疫病根治、子孫繁栄…といった願いや〈人々の暮らし〉と密接に関わって医術は発展してきたという背景を、決して忘れてはなりません。その部分を忘れてしまったり蔑ろにするのであれば、人にして人に非ずというよりも、まさに「治療家にして治療家に非ず」、でしょう。
医術=暮らしの一部であるという観点から見ればこれまでの話はごく当然のことなのですが、中には「根拠の無い治療をしてはいけない」という治療家もいます。
しかし、それは自らの暮らしを否定することにもなりかねません。例えばお正月なら初詣に行く、おせち料理を食べる、というのは一体何のためでしょうか?そこにはどういった根拠があるのでしょうか。お正月に限らず、その他四季の祝い事などの伝統行事などは、全て行ってはいけないことになります。
ハッキリ言って鍼灸に関わらず、東洋・西洋という括りは私はすごく馬鹿馬鹿しいとさえ感じます。時代は統合医療、複合的な治療にフォーカスし始めています。恩師もよく「複眼思考」の話をしていましたが、正にその通りだと思います。
五行論論争に関しても、事あるごとに槍玉に挙げられるので辟易するのですが、大事なのはまず「なぜそう考えるのか」という前に、時代的背景や歴史をキチンと調べて知る事からが大切だと私は考えたので、あらゆる東洋思想や方鑑学書を徹底的に調べました。
なぜ方位学の書を調べるのかといえば、東洋医学はあくまで東洋思想のエッセンスを医術として活用したものにすぎないからです。先日の私の講義でも、命・卜・相・医・仙について軽く触れる部分がありましたが、東洋医学は医=医術の部分に該当します。
そして方鑑学や気学の元になったとされている貴族の「方違え(かたたがえ)」に関して非常に細部まで記載してある書籍でさえも「五行論の根拠はわからない」と記されていました。おそらく日本に伝藩した時には、ある程度体系づけられていたのでしょう。
一説には、中国ではなくインド発祥ともありますが、仏教拡大の歴史的背景を考えるとあながち間違ってはいないのかもしれません。五行論に関わらず、物質・精神的なものを考えた時にあらゆる民族的思想・歴史的背景は無視できません。あくまで私の推論ですが、五行論に関してハッキリと出自を述べている書物があったとしても、中国の歴史を考えればとっくの昔に燃やされて失くなっているはずです。当時は多くの書物が難を逃れ台湾・日本経由で流出しているので、何処かに無い事もなさそうなのですが。
ちなみにH先生も授業中に話していましたが、「絵画は西洋ではなく、中国がルーツ」などの話は、案外知らない方も多いのではないでしょうか。ヨーロッパ・アジアの文化は民族移動、戦争、宗教拡大の影響から文化的に様々なものが入り混じって確立されています。アフリカ・アメリカに関しては植民地支配の影響は無視できませんし、アジアも同等です。
日本に関しては島国で植民地支配をされなかったということもあり、非常に独特な文化形成が成されてきました。神道に関しても、海外の宗教学者が「他に類を見ない、どの宗教とも比較のできないもの」「そもそも宗教という括りにできない」というほど独特のものです。神道の話をすると長くなるので、これはまた別の機会で書き綴っていきます。
ちなみに東洋医学が中医学の事を指していると思っている人が多いのですが、そもそも〈東洋医学〉という言葉はインドのアーユルヴェーダ、チベット医学、韓医学なども全てひっくるめた総称で、厳密に言えば東洋医学=中医学ではないのです。
余談ですがアメリカでは「どんなことを教えているのか?」と気になって、一時期はアメリカの鍼灸大学などを調べ倒していたのですが、アメリカは学費が日本の大学に比べて高額ですし、欧米ではTCM(Traditional Chinese Medicine=中医学)が主流というイメージが強いです。
しかしある講演会を聴講した時にアメリカの大学で東洋医学を学んでいた韓国人の先生に尋ねてみると、「たしかにアメリカではTCMが主流だけれど、日本鍼灸を専攻して学んでいる鍼灸師もいたよ」と話されていました。一体どんな日本鍼灸なのか気になりましたが、詳細までは聞けませんでした。
ちなみにアメリカでは州ごとに法律が違うように、鍼灸の資格条件に関しても要件が違い、州ごとに定められている一定の条件を満たせば鍼灸師として働くことができるのです。しかしカリフォルニア州は鍼灸激戦区のようですし、ハワイ州は資格が取りやすそうと思いましたが、今はどうか分かりませんね。あとアメリカは物価が高い分、アルバイトの鍼灸師でもそこそこの時給が貰えます。もちろん職場によりますが、アメリカの鍼灸師の求人検索をした時に「時給こんなに貰えるの!?」と、衝撃を受けました。
日本では3年制の鍼灸専門学校に通うか、4年制大学に通って国家試験に合格をすれば鍼灸師免許を取得できます。(鍼灸師ははり師、きゅう師の2つの免許を保有する治療家です)ちなみに日本では、一度鍼灸師の免許取得をすると、その後更新する必要がありません。海外では、数年ごとに免許更新が必須なことが多いです。
アメリカなどの海外の先進国では、鍼灸師として働く条件が日本よりかなり厳しい印象です。海外で働きたいのであれば、あとは発展途上国で鍼灸師としての勤務条件が詳しく定められていない国で、開拓するのもアリですね。
さて、やっと龍樹会の話になりますが、全身を使った動きが中心でしたが、足首の使い方がポイントでした。
例えば立っている状態で「足をあげてください」と言われたら、股関節や太ももの筋肉がつらくなったり、あがらない人もいます。その時に、どうしたら負担が少なく楽にあげることができるのか?というのはどの治療家でも課題にして指導する部分でもあります。詳細は書けませんが、参加する度に着目する部分がおもしろくて参考になります。
~あとがき~
どこへ行っても春らしさを感じます。友人から頂いたギフトで一服。三宮周辺はスタバがなぜか密集していますよね。
Ventiサイズはかなりのボリューム!院長に半分あげました。
桜の開花が待ち遠しいです。その前に、花粉の本格的な飛散が始まりそうですが…
コメント